独立行政法人国立美術館
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Road
1950年
紙本彩色・額 134.4×102.2cm
東山魁夷は1947年第3回日展に《残照》を出品し、それまでの低迷から抜け出して以後の自分の芸術の方向をつかんだ。50年第6回日展に出品した《道》は《残照》の延長線上にあり、温雅で平明な自然のとらえ方や単純化された構図などは、魁夷の作風の特徴をよく示している。これは青森県八戸の種差(たねさし)海岸にある牧場で写生した道だが、画家がはじめて八戸を訪れたのは十数年も前のことだった。その時の灯台や放牧馬も描きこまれていたスケッチからヒントを得て、道ひとつに構図をしぼり、他の説明的な道具立てをすべて省いて画面を構成したものである。画家自身この絵について、「遍歴の果てでもあり、また新しく始まる道でもあり、絶望と希望を織りまぜてはるかに続く一筋の道であった一そして遠くの丘の上の空をすこし明るくして、遠くの道がやや右上りに画面の外に消えていくようにすることによって、これから歩もうとする道という感じが強くなった」と語っている。
 
出典:
近代日本画の名作 : 東京国立近代美術館所蔵
1991年
p.80